Artist Statement

私の創作の原点は、幼い頃に感じた「泥を触る喜び」、素材そのものと戯れる感覚にあります。それはコントロールを手放し、大地との一体感に没入する時間でした。この原始的な記憶が、私の絵を支える土壌となっています。

私の創作を支えるもう一つの柱が、家業の生花店と草月流いけばなの世界で培われた、空間と構成への美意識です。草月流は、型に縛られず個性を活かすことで、空間そのものを捉え直します。その精神に深く共鳴し、私もまた、描くという行為を空間との静かな対話と捉えています。絵を「飾るもの」としてではなく、空間の中に佇み、空気をわずかに変えるような存在として置きたいのです。

創作は特別な場ではなく、日常のリズムに寄り添うように、生活の隙間から立ち現れます。植物の有機的なフォルムや、移ろう光の気配。そうした日々の断片的なイメージを、コントロールされた線と偶発的な絵の具の痕跡を重ね合わせることで画面に定着させています。そのため、一つ一つの作品は完成された物語というより、私の創作という終わりのない流れの中に浮かぶ、一つの情景です。

私の絵画は、主張するのではなく、ただそこに存在します。そして、鑑賞者一人ひとりの私的な空間と時間にそっと寄り添い、その場の空気をわずかに変容させる。そのような存在を描き出すことこそが、私の探求です。

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